北海道中川郡 / 人口 約580人 / 日本でいちばん小さな村 特設・議会の概要

音威子府村議会を、はじめての人へ

5人の村議会は、
いま何を議決しているのか。

「森と匠の村」を掲げる北海道最小の自治体・音威子府村。定数6・現員5・全員無所属の議会が、約30億円の村予算をふくむ議案を年4回の定例会で扱う—— その実像を、村の成り立ちから議員一人ひとり、課題までデータと言葉の両面でまとめました。

0
議決された議案
直近5号・全会期合計
0
否決された議案
不認定・不採択も0
0
修正された議案
起立採決・反対討論も0
0
原案可決率
すべて原案どおり可決

議会だより第69〜73号(令和7年6月〜令和8年4月)を1議案ずつ集計し、Codex(OpenAI)による独立再検証でも否決0・修正0を確認しています。

音威子府とは 議決データ 議会のしくみ 議員5人 なり手不足 議会改革 住民の声 但し書き
01

音威子府とは、どんな村か

音威子府村は、北海道のほぼ中央北部・天塩川の上流に位置する、人口約580人の村。 北海道で最も人口が少なく、面積の約8割を森林が占める「森と匠の村」です。村内には全国から生徒が集まるおといねっぷ美術工芸高等学校があり、 その生徒(約114名・全員が村外出身で住民票を村に移す)だけで人口の約2割を占めるという、ほかにない人口構造を持ちます。

約580
総人口
北海道で最少。1970年は2,839人
32.4%
高齢化率
要介護認定率は7.9%と低い
約2
人口に占める高校生
おと高生114名・全員村外出身
80.7%
公式LINE普及率
登録487人/スマホ世帯97%
約58
役場職員
少人数で全分野を兼務
12m超
年間降雪量
特別豪雪地帯・厳寒期-30℃
2.1
人口密度(/km²)
面積の約8割が森林
1912年〜
鉄道のまち
JR宗谷本線の要衝として発展

人口は半世紀で約8割減った

国勢調査による人口推移(1970〜2020年)+現在値・将来推計。1970年のピーク2,839人から、2020年は706人、現在は約580人。2060年には235人になるとの推計もあります(赤い破線が推計)。

3,000 2,000 1,000 2,839人(1970) 706人(2020) 約580人(現在) 235人(2060推計) 1970 2000 2020 2060

歳入の8割超は「自前ではないお金」

令和8年度の一般会計予算は約30億3,100万円(前年比+15.2%)。村税は歳入の4〜5%にすぎず、地方交付税・国庫支出金・地方債(過疎債など)で8割以上をまかなう。人口一人あたりの予算規模は都市部の数倍にあたります。

0%50%100%(歳入全体)
地方交付税・国庫支出金・地方債(過疎債など) 約80% = 国などから来る「自前ではないお金」
その他(使用料・繰入金・諸収入など) 約15%
村税(住民税・固定資産税など) 4〜5%(約8,900万円) = 村が自分で集める税金は、歳入のごく一部にすぎない

※地方債残高は一時30億円を超え、将来負担比率が40.6まで上昇した経緯があり、財政規律ガイドラインで起債管理を厳格化しています。割合は歳入構成のおおまかな目安です。

森と匠の村  基幹産業は農業(音威子府そば)と林業。村の象徴であるそば畑と、面積の約8割を占める森林。
02

議会は何をしているか ― 98議案を数えなおす

議会の一番の仕事は、村長が出す議案(条例・予算・決算・人事など)を審議して議決すること。 縦書きの「議会だより」は機械では読めないため、各号を画像化して1議案ずつ人の目で確認し、否決・修正・反対の見落としがないか二重に検証しました。対象は公開中の第69〜73号(令和7年6月〜令和8年4月)です。

第69号R7.6 / 第1回定例会
24件 すべて可決
24
第70号R7.9 / 定例+臨時2
14件 すべて可決
14
第71号R7.11 / 定例+臨時
21件 すべて可決
21
第72号R8.2 / 第4回定例会
14件 すべて可決
14
第73号R8.4 / 定例+臨時
25件 すべて可決
25
議案には条例の制定・改正、当初予算・補正予算、決算認定、人事同意(教育長・教育委員など)、指定管理者の指定、意見書、議員派遣などが含まれます。 そのすべてが「原案のとおり可決」。否決・修正・継続審査は一件も確認されませんでした。
🔎 Codex(OpenAI)による独立検証:同じ画像を別のAIにブラインドで読ませて数えなおしたところ、5号すべてで「否決0・修正0・全会一致でない採決0」が一致。あわせて当初集計の92件を、決算認定(6会計分)の数え方と意見書1件の取りこぼし補正により98件へ更新しました(結論は不変)。
100%原案可決率
可決・承認・同意・認定98件
否決・不認定・不採択0件
修正可決0件
全会一致でない採決0件
03

議会のしくみと、議員の仕事

小さな村なので、委員会も事務局も最小構成。少人数で約30億円の予算を「全員で一応すべて見る」かたちになっています。

定例会は 年4回

3月・6月・9月・12月。必要に応じて臨時会も開く。1会期は数日(例:令和8年第1回定例会は議案22件を審議し3日間で閉会)。地方議会では年4回が全国標準。

委員会は 実質1本

常設は「行政常任委員会」のみで全議員が所属(委員長=藤吉/副委員長=玉田)。分野別の複数委員会を持つ規模ではなく、本会議に近い一体運営。

議会改革特別委員会

令和5年12月に設置(委員長=小西副議長)。12回開催し、町村総会・定数・報酬など7項目を審議して令和8年3月に報告(→「議会改革」の章へ)。

事務局は 役場と兼務

議会事務局は役場庁舎2階。事務局次長が監査委員事務局次長を兼ねる。専門スタッフを厚く置けないため、議案の独自修正・対案づくりには構造的な制約がある。

あつかう予算

令和8年度 一般会計予算 約30億3,100万円。村税は歳入の4〜5%にすぎず、地方交付税・過疎債への依存度が極めて高い。

傍聴・情報公開

本会議の傍聴は自由。年4回「議会だより」を発行。本会議の会議録全文はオンライン非公開で、村役場で閲覧・請求する形。

議員は普段、何をしているのか

議会の仕事は、年4回の定例会だけではありません。会期と会期のあいだも、委員会・監査・広域の組合議会・研修・視察・地域行事と、議員の予定は途切れません。直近1年の「議会の動き」から、5人が実際に何をしているかを4つに整理しました。

① 審議する

定例会(年4回)・臨時会に加え、予算審査特別委員会・決算審査特別委員会で当初予算や1年分の決算を集中審査する。会期は数日でも、議案は20件を超えることも。

② 委員会と監査

行政常任委員会、議会改革特別委員会(この1年で12回)。監査委員は毎月「例月出納検査」で村のお金の出入りをチェックしている。

③ 広域の議会を兼ねる

単独では維持できない消防・ごみ・医療を近隣と共同運営する一部事務組合の議会議員も務める ── 上川北部消防事務組合/名寄地区衛生施設事務組合/名寄地区広域生活圏事務組合。

④ 研修・視察・地域

町村議会議員研修会や議長全国大会で学び、国道40号バイパス(音中道路)などを現地視察。卒業式・文化祭・消防出初式に出席し、大学との連携協定や宗谷本線の活性化協議など外との橋渡しもする。

5人で約30億円の予算を見ながら、これだけの広域・地域の役割を兼ねている。一人あたりの守備範囲は、都市部の議員とは比べものにならないほど広いのが、小さな村の議会の実情です。

04

どんな人たちがいるのか ― 議員5人と1つの空席

任期は令和5年5月1日〜令和9年4月30日(2023〜2027)。全員が無所属で、専業の政治家というより、農業や団体職員と兼ねながら村を担う人たちです。 欠員1は定数の6分の1以内のため、法律上は補欠選挙なしで議会は成立しています(顔写真は村公式サイトより)。

大谷勝敏議員議席6番
議長

大谷 勝敏おおたに かつとし

78歳・当選5期/農業/無所属
最多当選のベテランで、現職の議長。農業を生業とし、森と匠の村に長く根を張ってきた地元の重鎮。
議長最多選
小西邦広議員議席5番
副議長 / 議会改革特別委員長

小西 邦広こにし くにひろ

68歳・当選4期/団体職員/無所属
議会改革特別委員会の委員長として、町村総会の検証など7項目の見直しをリード。上川北部消防事務組合議会議員も兼務。
副議長議会改革をリード
藤吉秀明議員議席3番
行政常任委員長

藤吉 秀明ふじよし ひであき

80歳・当選4期/無職/無所属
最年長。村政全般を所管する行政常任委員会のとりまとめ役。名寄地区衛生施設事務組合議会議員として広域のごみ・衛生も担う。
常任委員長最年長
杉山均議員議席2番
行政常任委員 / 議選監査委員

杉山 均すぎやま ひとし

68歳・当選2期/団体職員/無所属
一般質問の常連で、村政総括・行政機構改革・外部人材活用・高齢者福祉などを継続的に質問。2019年の選挙では職業を「NPO法人職員」と記載。
監査委員質問の常連
玉田健議員議席4番
行政常任副委員長

玉田 健たまだ たける

41歳・当選2期/農業/無所属
最年少で唯一の現役世代。農業者。学校給食化・ヒグマ対策・防災・カスタマーハラスメントなど、暮らしに近いテーマを質問。上川北部消防事務組合議会議員。
最年少常任副委員長
議席1番 = 欠員
(定数6に対し現員5)

「団体職員」って、具体的には?

議員名簿の職業欄にある「団体職員」とは、会社員(民間企業)でも公務員でもなく、農協(JA北はるか)・森林組合(上川北部)・社会福祉協議会・商工会・各種協会・NPO法人など、各種の団体や組合に雇用される職員の総称です。 音威子府では小西議員と杉山議員がこれにあたり、杉山議員は2019年の選挙では「NPO法人職員」と記載されていました(具体的な勤務先団体は公開情報では特定できませんでした)。 平均年齢は約67歳で、最年少の玉田議員(41歳)と最年長の藤吉議員(80歳)で約40歳の開きがあります。

05

課題① 選ばれていない議会 ― 4回連続の無投票

「全会一致」の手前にある、もうひとつの事実。村議選はこの10年以上、選挙そのものが行われていません。 立候補者の数が定数ちょうど(6人)で、投票せずに全員当選=無投票が続いてきました。

547
有権者数(2023年)
告示時。人口約580〜600人のうち
約9
人口に占める有権者の割合
子どもが少なく、高齢者とおと高生中心の人口構成
1議席/人
議員1人あたりの代表
有権者547人 ÷ 議員5人 ≒ 約109人を1人が代表
無投票候補 6人 / 定数 6(=全員当選)
無投票候補 6人 / 定数 6
無投票候補 6人 / 定数 6
無投票候補 6人 / 定数 6
2007/4/22
投票実施候補 8人 / 投票率 91.96%
12年+

2011年から4回連続で無投票。「名前を書けば(立候補すれば)通る」状態が続く。 全国でも、2019〜2023年に選挙のあった926町村のうち254町村(27.4%)が無投票で、これは音威子府だけの問題ではありません。

06

課題② 議会自身は、どう考えているか

議会改革特別委員会(令和5年12月設置・12回開催)が7項目を議論し、令和8年3月の定例会で報告しました。 注目は項目1——「議会をなくして全有権者で決める町村総会」を検討した結果が「見送り」だったことです。

1
町村総会の導入を検証する
見送り 「議会維持が原則」。全有権者が一堂に会して議会と同等の民主主義を実践できる環境は、現実的に整っていないと判断。
2
議会の在り方
現体制を継続 動画配信などで関心を高める。
3
政策サポーター制度の導入
時期尚早
4
ハラスメント対策
条例を早急に整備 村議会ハラスメント防止条例。
5
議員定数
現行6名を維持 これ以上削減すればチェック機能を損なう。
6
政務活動費の導入
必要なし
7
議員報酬の引き上げ
継続課題 全道・全国平均を大幅に下回り、なり手不足の一因。
07

課題③ 議決は全会一致でも、声は質問に現れる

採決はほぼ全会一致でも、議員には日々住民の声が届いています。それが一番はっきり出るのが各定例会の一般質問。 質問のテーマと、それに対する村長・教育長の答弁を、行をタップすると開けるようにまとめました。

第73号(R8.4)/ この村のいまを象徴する一問
「外部人材を活用した、音威子府村の活性化・魅力化について」
質問 杉山 均 議員 / 答弁 遠藤 貴幸 村長 ── 村の外の力をどう取り込むかが、すでに本会議の場で正面から問われている。
第73号杉山均 議員 → 遠藤村長外部人材を活用した、音威子府村の活性化・魅力化について
遠藤村長の答弁プロジェクトマネージャー・地域おこし起業人・地域おこし協力隊の3制度で具体的な成果(ふるさと納税の返礼品開発、木遊館のツール更新、生成AI活用、来館者数のコロナ前回復など)が出ていると評価。経費は国の特別交付税で措置され村の実質負担は小さいが、貴重な税金として収益増・地域価値向上の視点で運営。今後はnoteを使ったハイブリッド発信を強化し、任期終了後も村の仕組みとして「自走」できるよう制度を定着させたい、と前向きに答弁。
第73号玉田健 議員 → 遠藤村長行政サービスに対するカスタマーハラスメントについて
遠藤村長の答弁常識を超えて職員の人格・尊厳を傷つける言動には組織として毅然と対応すべきとし、判断基準・相談体制・退去命令の手順を盛り込んだ対応マニュアルを作成中。電話録音機能の追加も検討。条例化は当面せず、まずマニュアルを運用してから検討する段階的スタンス。「サービス業だから」と不当な要求に謝る風潮を排し、職員を守る職場環境を研修で整えると答弁。
第72号杉山均 議員 → 遠藤村長高齢者の福祉施策について(交通手段の確保)
遠藤村長の答弁ワゴン車のない高齢者への外出支援は検討可能だが、通院支援はニーズが多様で現体制では困難と説明。利便性が十分でない現状は認識しており、定住自立圏の会議で周辺自治体・北海道・バス会社と連携してダイヤ見直しなど公共交通のあり方を考え、制度・財政の改善を要請し続けたいと前向きに答弁。利用希望のニーズ調査を踏まえ実現可能な方法を検討する。
第72号玉田健 議員 → 遠藤村長防災対策について(備蓄・避難所・情報伝達)
遠藤村長の答弁地域交流センターに「100人で3日分」を基本に非常食1,600食・飲用水・簡易トイレ700回分などを備蓄。道の駅は1階を避難・調理スペース、2階も避難場所として開放したい(協議中)。情報伝達は登録者487人・世帯普及率97%の公式LINEと広報車を活用。スキー場ロッジが唯一の高台避難場所で、危険時はLINE等で迅速に誘導。避難訓練で課題を明確化し備えを強化すると答弁。
第72号小西邦広 議員 → 遠藤村長公共施設のネーミングライツ・道の駅2階の有効活用について
遠藤村長の答弁ネーミングライツは有効な手段と認めつつ、馴染みある施設名の変更になるため慎重に検討。リスク管理をしながら収入が得られる方法を模索する。道の駅2階はセコムと協議を進めており、貸しスペースや防災拠点としての活用も視野に、村の象徴として地域活性化に向け具体策を検討すると前向きに答弁。
第71号玉田健 議員 → 遠藤村長ヒグマ対策について
遠藤村長の答弁駆除計画頭数の上限を令和5年度から10頭(捕獲許可5頭)に変更。牧草ロールの被害事例を記録・報告し、看板や回覧で注意喚起。対応マニュアル整備やハンター選定を協議中で年度内整備を目標。市街地での緊急銃猟(村長判断での発砲要請)は体制整備と周知が前提。ゴミ出しの注意喚起は強化、スプレー常備は未検討。町村会を通じ国・道へ抜本対策を求めると答弁。
第71号小西邦広 議員 → 髙橋教育長高校(おと高)の工芸部門の専門的な講師について
髙橋教育長の答弁美術教員が木工機械に慣れるまで時間を要し、専門性の高い指導をしている実態を承知。専門講師の採用・招聘は必要と考え、工芸免許を持つ教員の配置を引き続き強く要望していく。現在は東海大学との連携協定(7月締結)に基づき出張授業やデザインスクールを実施し、生徒・教員の技術向上を図っていると答弁。
第70号杉山均 議員 → 遠藤村長行政機構改革について
遠藤村長の答弁住民サービスの向上を最重要目的に、課の数を大幅に変えるなど年内実施を検討。改革は職員のモチベーション向上・超過勤務抑制にもつながると説明。推進の主役は職員であり、職員・議員・住民の理解を得ながら進める。「スマホ役場」は個人差を踏まえサポート体制も同時に整え、デジタル化の遅れを支えながら推進すると前向きに答弁。
第69号杉山均 議員 → 遠藤村長遠藤村政の中間総括について
遠藤村長の答弁2期目4年を経て、選挙で掲げた約束の半分以上は達成し、施政方針に沿って「新しい村づくり」のスタートはきれたと自己評価。施策が進みきらない要因として財源・人材(マンパワー)・住民との合意形成を挙げ、事業の見直しでは利用者への影響に配慮しながら住民の理解と合意を図って進めると答弁。
08

このデータの但し書き

読むときに気をつけたいこと

  1. 対象は直近5号だけ。村の公式サイトで公開されているのは第69〜73号のみ。第1〜68号はオンライン非公開のため、長期の否決・修正の歴史はこの分析ではわかりません(Wayback等にも未収録/村窓口での入手が必要)。
  2. 本会議の会議録(全文)はオンライン非公開。公開されているのは年4回の「議会だより」だけで、会議録検索システム・北海道ポータル・村公式サイトのいずれにも全文はありません。「だより」は可決結果が中心の媒体で、賛否の内訳や反対討論までは載らないため、討論の有無を断定するには役場で会議録を閲覧・請求する必要があります。本ページの「反対0」は議会だより上の表記にもとづく記録です。
  3. 件数はCodexの独立検証で補正済み。当初92件としていましたが、Codex(OpenAI)の独立再抽出が第71号の決算認定(6会計分)の数え方と第72号の意見書1件の取りこぼしを指摘し、計98件に更新しました。可決/否決の結論(否決0・修正0・反対0)は不変です。議案番号は各会期で独立採番のため、号をまたぐと同じ番号が再登場しますが矛盾ではありません。
  4. 「可決系」には可決・原案可決・承認・同意・認定をすべて含めて集計しています(専決処分の承認、決算認定、人事同意も1件として算入)。人口・予算は2025〜2026年時点の公開情報、人口推移は国勢調査によります。